コマンダー問題

  • RPGではプレイ中、熟練者が、ルールになれていない初心者に戦術を教えることがあります。これ自体は、非常に素晴らしいことです。知恵と力を出し合って、困難を乗り越えていく。仲良きことは美しきかな。とくに名前は伏せますが、PCの死亡率が高い諸RPGのオフィシャルシナリオを無事くぐりぬけるためには、必須の行為といえるかもしれません。
  • しかし、戦闘主体のゲームで、それがいきすぎると、初心者のPCがただのコマと化し、熟練者の命令通り動かされるだけの単純作業の繰り返しになってしまう可能性があります。これは非常に残念。テーブルになんともいえない倦怠感が発生します。
  • 上記のような問題を、河嶋はコマンダー問題と呼んでいます(言語定義)。コマンダーも、生き残るために必死でやってるんで、悪意はないんですが、そこがまた問題だったりします。
  • この問題は、河嶋の見立てだと「データの見通しが悪い」という特徴を持ち、「戦闘がガチめ」な傾向を持つ状況で発生しやすいです。嗚呼。ばっちり『迷宮キングダム』。
  • しかも、『迷宮キングダム』の場合は、パーティー内のリソース共有がかなり高いレベルで行われているため、個人による意志決定を行いにくくなっている構造があります。様々な利害関係とその意見調整のために、だらだら長引く会議。個人の欲求と組織の利益をすりあわせ、不満と妥協と中庸との戦いに勝利することこそが、『迷宮キングダム』の裏テーマのひとつなんですが、それは余談ですね。閑話休題
  • ただまぁ、程度の大小はあれど、コマンダー問題はどのRPG*1でも起こる問題なので、『迷宮クロニクル Vol.4』のコンベンション用ハウスルール以降は、やや放置気味でした*2。申し訳ない。怠慢です。
  • しかし、遂に我々はそうした問題をクリアしたRPGと出会いました! この秋発売されたロボットRPGエムブリオマシンRPG』です。戦闘中のコマンダー問題を、プロットと相談禁止によって解決しているのです。しかも面白い!
  • お客様にとっての幸運は、我々がもたらしているのでない限り、ゲーム作家にとっての不運です。むむむ。これは、まずい。まずすぎます。それはもう鮮やかに、ゲームデザイン的手法でコマンダー問題を解決されてしまいました*3。しかし、悔しいですが、爽快な気分にもなります。それまでにキレイです。本当は、だまっていようと思ったんですが、爽やかな気分なんで書いちゃいます。
  • エムブリオマシンRPG』をつくったのは、『Role & Roll』誌上でボードゲームをリプレイ記事風に紹介する連載を行っている秋口ぎぐるさん。勘違いも多分にあるかもしれませんが、河嶋も同様の連載を『ゲームぎゃざ』『GAME JAPAN』で行っている身なので、ああ、やはり、そこから現れるか、という心持ちになりました。
  • 畜生やりおったな、という気分で一杯ですが、これに負けないゲームをつくるべく、より一層の精進を行っていきたいと思います。ゲームつくるぞー!

*1:どころか、『スコットランドヤード』た『ビトレイヤル・アット・ハウス・オン・ザ・ヒル』などの協力型のマルチプレイヤーズゲーム全般でも発生します

*2:正確には、『迷宮キングダム 王国ブック』で変更された《希望》消費によるダメージ増加も、この問題を解決する一助になればと思って実装しております。要は《気力》ためればダメージは上がるんだから、余計なことを考えず6振れば勝ち勝ち。という構図へのシフトを狙っています

*3:ちなみに、河嶋はまだ『エムブリオマシンRPG』をプレイにはいたっておりません。友人一同のプレイ風景を数度ながめた程度です。今後、もう少し高い精度で解析していきたいと思っております。