Role & Roll Vol.195

今月もRole & Rollの原稿を書きました。

 

 

今号では、迷宮キングダム・コンパニオンの第2回を執筆させていただきました。
大ダメージを出すと天井や壁、床が壊れてしまう「崩落」や、王国が受ける変調である国難アデモス用のクラススキルなどなど、色々な選択ルールを収録しております。
その中でも「名物ルール」は王国の特徴的な交易品をつくるためのものです。王国の個性を表現しつつ予算を稼ぐことができる、ちょっと楽しいルールですよ。
どんなものなのか、「ぶらり行き止まり王朝」のみなさんに紹介してもらいましょう。

 

 

百万迷宮の片隅。ぶらり行き止まり王朝。
国王は、王宮に騎士と従者を呼び出していた。

 

国王:なんでも近頃、色々な小王国で名物をつくるのがブームらしいのう。
騎士:はぁ。
国王:我が国でも、ぜひつくってみたいぞ。
従者:新しいルールが出ると、すぐ使いたがるんだから。
国王:つくってみたいんじゃ!
騎士:うちの国、万年金欠だし。《予算》増えるんならいいんじゃね?
従者:はいはい。ルールを読みますね。

  

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国王:どうじゃ、わかったか?
従者:えーと。これによると、名物をつくるのは王国・終了フェイズの予算会議っぽいですね。
国王:じゃあ、今から王国フェイズの予算会議じゃ!
騎士:強引だなーーー。
従者:あー、名物をつくると維持費が増えますね。
騎士:おいおい。大丈夫か?
従者:名物1種類につき、維持費1MGみたいですね。
騎士:やっぱヤめとこーぜ。
国王:だいじょぶ、だいじょぶ。稼げばいいんじゃよ! 商売には投資が必要。借金せずに事業を始めるヤツなんかいないわい。名物作成じゃ!

 

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従者:まずはカテゴリ概要を決めるみたいですね。
国王:かてごり?
騎士:名物の種類ってことか?
従者:はい。カテゴリを決めたら、それが具体的に、どんなものなのかを考えます。
国王:どんなのがあるんじゃ?
従者:カテゴリは、食品、嗜好品、道具、医薬品、資源、著作物の6種類ですね。
騎士:いろいろあるんだな。
国王:どうせなら、みんなに楽しんでもらえる名物にしよう♪
騎士:……著作物ってのはなんなんだ?
従者:物語とか歌とか絵とかですよ。
騎士:あー。たしかアイドル国王の国でCDとか売ってたなー。
従者:陛下のキャラグッズとかを売るのもありっぽいですよ。
国王:それなら著作物がいい! 余が執筆中の小説を名物にしよう!

 

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騎士:……面白いのか、これ?
国王:なんじゃとッ!!
騎士:いや、俺「ひとつの言葉」読めないから。
従者:騎士さま、〔才覚〕1ですもんね。
国王:みんなに楽しんでもらうなら「ひとつの言葉」で書かないと分からんじゃろ!
騎士:〔文化レベル〕が低い国の民は俺と一緒で、字、読めないぜ。みんなで楽しむってんなら、小説はむいてないんじゃねぇか?
従者:字も読めない騎士さまにしては、マトモな指摘ですねぇ。
国王:それもそーかのー。
騎士:みんなに楽しんでもらうなら酒だろ! 酒にしよーぜ!

 

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国王:(ごくごくごく)。
従者:あああああ! 陛下、ダメですよ!
国王:これ、アルコール入ってないぞ?
騎士:だって俺、呑めねーもん。
従者:えーーーーーー。
騎士:ノンアルコールの酒でもいいじゃねーか。
国王:(ごくごくごく)こっちのミルクは、おいしいぞ。
従者:そもそも嗜好品って「好きで、食べたり飲んだりするもの」って意味ですよ。みんなに楽しんでもらうなら、食品とかがいいんじゃないですか?

 

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騎士:で、これか?
国王:キノコうまいぞ。
従者:我が国の主食です。
騎士:地味じゃね?
従者:いっぱい採れますから、いいかもしれませんよ。
騎士:国の北には、キノコの森あるからなぁ。
国王:よし! 我が国の名物はキノコに決定じゃ!
従者:カテゴリは食品、概要はキノコってことになりますね。
国王:うむ!!

 

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騎士:次は何を決めるんだ?
従者:名物の名前です。
騎士:キノコじゃダメなのか?
従者:カテゴリや概要をふまえたうえで、決めるんですが……条件を1つ以上満たす必要があるみたいです。
国王:条件とな?
従者:つい口にしたくなるような「語感」とか、その名物の長所をアピールできるような「長所」とかを名前の一部にいれないといけません。
騎士:むずかしいなー。
従者:「自国名」とか簡単ですよ。名前の一部に王国名をいれればいいんです。
騎士:うちの名前は「ぶらり行き止まり王朝」だから……。
女王:「行き止まりキノコ」とか?
従者:そうです、そうです。
騎士:「行き止まりキノコ」は感じ悪くね?
従者:たしかにちょっとネガティブな印象かもしれませんね。
国王:なら「ぶらりキノコ」とか?
騎士:そっちの方がよくねーかもな。
女王:むう。では「王朝キノコ」じゃ。ラグジュアリーな感じがせんか?
従者:そうですね。一番マシです。

  

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従者:これで1レベルの名物完成です。
騎士:おお。意外と簡単だったな。
国王:というわけで、民たちに「王朝キノコ」をいっぱい箱詰めしてもらったぞ。
騎士:で、この名物で、どうやって儲けるんだ。
従者:予算会議中に「交易」をすることで他国に出荷できます。そして「需要表」を使用して、出荷の結果を決めます。
騎士:(需要表を見つつ)レベルと同じ数だけサイコロを振るんだな。
従者:1レベルだから1個ですね。陛下、どうぞ。
国王:いくぞーーーー、えいッ!!(コロコロ)

 

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国王:4じゃッ!!
従者:えーとですね。「周囲の産業が順調。『食品』か『著作物』なら《予算》を2MG獲得。『嗜好品』か『道具』か『資源』なら《予算》を1MG獲得」とのことです。
国王:!!!!

 

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騎士:おーーーーー! 儲かったじゃねぇか!
国王:す、すごいのう。キノコが2MGになったぞ!!
従者:とはいえ、維持費があがってますから。
騎士:実質的には1MGの儲けか。でも、ボロいじゃねぇか! もっと交易できないのか?
従者:終了フェイズの予算会議でもっかいできますよ。
国王:よし。終了フェイズじゃな。次も儲けるぞ!
騎士:もう、冒険フェイズすっとばそうぜ。「需要表」振ろう、振ろう。
国王:うーん。それもいいが、名物のレベル上げはできんのか?
騎士:おお、なるほど。サイコロ振れる数を増やすんだな!
従者:名物を「量産」するための施設を建てたりすると、レベルを上げることができるんですが……。
騎士:なんの施設を建てればいいんだ?
従者:食品なら【厨房】、【宿屋】、【農地】、【牧場】、【特産物】、【酒場】、【酒蔵】、【狩り場】、【仕出し屋】から、概要にふさわしいもの2種を選びます。
国王:ほかは分かるが、【仕出し屋】ってなんじゃ?
従者:上級ルールブックで追加された施設ですよ。

 


国王:キノコだったら、【農地】や【特産物】とかかのう。
騎士:その2つを建てるには合計8MG必要だぞ。
国王:大変じゃのう。
騎士:「王朝キノコ」は、秘伝の加工をしてることにして【厨房】にしとこうぜ。それなら4MGで建設できるぞ。
国王:うむ。よかろう。
従者:では、その2種を量産施設にしましょう。
国王:……まぁ、それにしても4MGは遠いのう。
騎士:なんか、てっとり早くレベル上げる方法はないのか?
従者:「宣伝」って方法がありますよ。セッション中に、砂時計週報に広告出したり、インフルエンサーに取り上げられたりすると、レベルがあがります。
国王:それも金がかかりそうじゃのう。
従者:そういう人たちから何か依頼されるようなシナリオだと、いいんですけどねー。報酬として紹介してもらうんです。
騎士:もっと簡単なヤツはないのか?
従者:「改良」というのもあります。セッション中に、名物の長所を伸ばすような材料やアイデアを獲得するとレベルが上がりますよ。
騎士:ッ!! よし。じゃあ、キノコの森行こうぜ! あそこなら、質のいいキノコがあるかもしれねぇよな!
従者:たしか、【茸人】とか【茸ドラゴン】とかいたはずですけどね。
騎士:一石二鳥だ。そいつら倒せば「肉」の素材落とすかもしれないだろ。レアな「王朝ドラゴンキノコ」に改良してレベルアップだ!
国王:うむ! 騎士に賛成! 冒険に出かけるぞ!
従者:編成フェイズすっとばしたから、みなさま《配下》0人ですよ?
騎士:まかせとけ! 【茸ドラゴン】くらい、《配下》なしでも大丈夫だ!
国王:頼もしい。それでこそ、余の騎士だな。さぁさぁ従者よ、出発の支度をせい!!
従者:はーーーーーーーい。

 

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……こんな感じで、名物をつくっていくルールです。
「需要表」には、まったく儲からない結果もあります。ぶらり行き止まり王朝のように、うまく《予算》をゲットできるかどうかは分かりません。それどころか維持費が増えて、さらに赤字を増やすこともあるでしょう。
ただ、名物を通じて、王国の別の側面を描くのは楽しいですよ。GMにお願いして、名物を宣伝したり、改良したりするためのシナリオをつくってもらうのも面白いかもしれません。ぜひ、お試しいただければと思います。生産終了すれば、維持費もかからなくなりますから、お気軽にどうぞ。

余談になりますが、ゲームの中の出来事とは言え、著作物の生産終了は心にくるものがありますね。

 

 

 

Role & Roll 195号には、迷宮キングダム・コンパニオンのほかにも、『インセイン』、『マギカロギア』、『エネカデット』、『フタリソウサ』、『サタスペ』、『ダークデイズドライブ』、『ディスガイアTRPG』などなど冒険企画局のゲームの記事がいっぱい掲載されております。

 

ぜひよろしくお願いいたします!