有楽町線のホームで

  • 昨日は、もうなんだかがっくりすることがあって。
  • 締め切り2本もあるのに、手、つかないだろうなぁ、と思うと絶望的な気分になった。
  • そんな風に、地下鉄のホームで鬱々していたら、隣に立っている人に異変が。
  • ぐすぐすいってるから、何だろうと思ってみてみると、携帯の画面を凝視しながら、泣いているのだ。
  • 顔をうつむけているせいか、鼻の先端に涙だか、鼻水だか、よく分からない液体をたまらせ、ぐすぐす泣いている。
  • 冴えない風体の男性。年齢は若いようでもあるし、中年にも見える。
  • ぱっと見は、制服姿の老けた高校生にも見えなくないが、靴とかベルトとかがおっさんぽすぎる。
  • 彼女と別れでもしたのかなぁ?
  • 人目をはばかるでもなく、涙を流し続ける彼を見て、何か自分だけ不幸、みたいな気分が少しだけ消えて、代わりに恥ずかしくなった。
  • いや、でも悲しいことがあったにしては、涙に感情がこもっていないようにも見える。
  • 気になって、表情を確かめようとすると、男の人の顔には、怒りも悲しみも浮かんでいない。
  • ああ、もしかして携帯で小説とか読んでたのかなぁ。河嶋もよく『ワンピース』とか読んで泣くことあるし。
  • そう思うと今度は、地下鉄のホームで臆面もなく泣いてもらえるような物語を書かないと、という気分になった。
  • まったく前向きで自分らしくないと思うけど、まぁ、何かの理由を見つけて前に進んでいかないと、大人は困っちゃうからなぁ。
  • きっと、その男の人と会わなくても、まぁ、それなりに立ち直ってはいたと思うのだけれど。
  • それでも、涙の男性に感謝。