まよカード ピュアセレクト

  • 先日、『まよカード ピュアセレクト』という『迷宮キングダム』のアクセサリを発売しました。これは、非常に楽しいアクセサリです。『迷宮キングダム』で使うアイテムをカード化したものなのですが、とくにレアアイテムのカードがよいですよ。パ先生ことボインこと落合なごみによる全70点のフルカラーのイラストが、モノクロームな百万迷宮に彩りを添えてくれます(【バカには見えない鎧】のカードに何も描いてないって?  いえ、印刷ミスではないですよ。素晴らしい鎧が描かれているじゃないですか)。
  • 何より、このアクセサリを使っているだけで、ゲームをしらない人からみたとき、「ああ、ゲームしてるんだな〜」というのが分かるのがよいです。想像上の異世界だけでなく、RPGのプレイ風景にまで彩りを加えてくれる逸品。『迷宮キングダム』のユーザーのみなさんは、ぜひ、一度使ってみてほしいです。
  • しかし、このアクセサリの中には、オマケとして「デバイス・ファクトリー」というルールも収録されています。今日は、このルールについて紹介しようと思います。

 お嬢様の誕生日が目前に迫っている。
 暗黒不思議学園につくられたばかりの図書室にこもり、ユサンは必死に文献をあさっていた。
 まずい。まずすぎる。
 いくら学園祭の準備におわれていたとはいえ、お嬢様の誕生日を失念してしまうとは、このユサン一生の不覚。せっかくの誕生日に何のプレゼントも用意していなかったら、きっとまたすごい勢いでスネはじめるに決まっている。普段は比較的(ここ重要)大人しいお嬢様だが、一度スネはじめると前葉体か、それとも死にぞこないかというほど面倒なシロモノに変貌するからなぁ。大体、あの猫耳がいなくなったときも……
 いやいや、今はそんなことより、プレゼントだ。
 お嬢様は、幼い頃からサルバトーレ様より、色々な贈り物をもらっている。そんじょそこらのレアアイテムでは、「ふーーーん」で終わってしまうだろう。
 困った。困り果てた。
 全蔵書数64冊を誇る暗黒不思議学園図書室の本をすべて読み終わり、ユサンは絶望の表情を浮かべ、神に祈った。
 助けて不思議さまッ!
「はいよ〜」
 すると、ひさびさに聞く間の抜けた声が、図書室に響き渡った。


ユサン:あわわ。これはわさびさん、お久しぶりでございます。でも、あなたお眠りになっていたのでは……
わさび:にひひひ。不思議だね♪
ユサン:……いえいえ。溺れるものは藁をもつかむと申します。師匠! ひとつ、リジィ様がお気に召すような、ゴージャスでスーパーレアなアイテムはございやせんでしょうかッ!!
わさび:をほほほほ。いいでしょう。この「デバイス・ファクトリー」のルールを使えば、あら不思議! この世に2つとないアイテムをつくることができるのよ〜
ユサン:でも、それお高いんじゃないですか?(「そーよねー」とどこかから生徒たちがあわられる)
わさび:それがなんと、今なら160枚のカラーのアイテムカードとカードリスト、それに『猟奇戦役』で追加されたアイテムも一緒になった各種アイテム表までついて、なんとお値段3,150円!
ユサン:ええぇぇぇぇぇぇぇっっ!(「すごーい」「安いわねー」と感心する生徒たち)
わさび:今なら金利手数料も……
ユサン:能書きはいいから、早く使わせてください! どんなアイテムができるんですかッ!
わさび:落ち着いて落ち着いて。そこはそれ、まよキンなんでランダムで決めるですよ。まずは、どのくらい変わったアイテムか、特性の数を決めるんだけど……
ユサン:多い方が強いんですか?
わさび:まぁ、そ〜ゆ〜わけでもないよ〜。最初は、特性が1個のアイテムをつくってみよっか
ユサン:はい! サイコロは何個振るんでしょう?
わさび:最初は、そのアイテムのカテゴリを決めるために1D6を振って
ユサン:てやッ(コロコロ)……1です
わさび:じゃあ、武具アイテムだね。今度はD66を振って
ユサン:はいはい(コロコロ)……22ですね
わさび:アイテムのベースになるのは、【籠手】だね
ユサン:【籠手】? 聞いたことないアイテムですな
わさび:『猟奇戦役』で追加されたアイテムだからね〜。ダメージを1点減少するうえに、白兵武器のダメージを1点上げられるよ〜
ユサン:それは強い! それだけでもびゅ〜な感じがしますよ
わさび:じゃあ、今度はこの【籠手】のどの辺が変わっているかを決めるために、特性の種類を決めるよ〜。2D6振って
ユサン:ほわ! 9です!
わさび:……え〜と。その【籠手】は呪禍をもっているよ
ユサン:じゅか……バードの魔法ですか?
わさび:それは呪いにうたで呪歌。これは、呪いにわざわいで呪禍。カースアイテムってことだね
ユサン:げげぇーーーーッ! ちょっと、わさびさん!
わさび:あーーー、でもこういうバッドな特性の場合は、もう1回特性表を振ることができるから、何かのプラス効果はつくはずよ
ユサン:もっかい9が出たら……?
わさび:呪いが2つあるカースアイテムのできあがりだよね
ユサン:おいぃぃぃーーーー! ちょっとそれ多すぎじゃね!
わさび:まぁまぁまぁ。いいから、呪いの内容を決めるためにサイコロ振ろうよ。ほれほれほれ
ユサン:むむむむむ。まぁ、仕方ありません。(コロコロ)……3です
わさび:(表を読み上げつつ)「このアイテムを装備している限り『愚か』のバッドステータスを受ける」……だって。バカになる【籠手】だね(あはははははは)
ユサン:ちょ、ッッッ!
わさび:まぁまぁまぁ、ずっと「肥満」になる効果に比べたら良かったじゃん。リジィって、元々そんなに頭よくないし
ユサン:おいおいおいおい! わさびさん、神様になってから性格変わってませんッ!?
わさび:にひひひひひ。いい女は豹変するのだ
ユサン:……(装備すると「愚か」になる【籠手】をぢっ、と見つめる)
わさび:はい。じゃあ追加でもっかい特性を決めましょう
ユサン:(うなだれつつサイコロを振り)……6です
わさび:えっとね。「そのアイテムは合成具である」だって。ユサンの蛇石剣みたいに、二つのアイテムの機能を兼ね備えてるんだよ
ユサン:なるほど! その結果次第では、悪くなさそうですねッ!
わさび:【籠手】のときみたいに、1D6とD66を振ってアイテムのカテゴリを決めて〜
ユサン:(コロコロコロコロコロ)……3の23です
わさび:ええとね。その【籠手】は、ぢつは【チョコレート】でできています!
ユサン:おいぃぃぃーーーー! なんじゃそら!
わさび:きっと、お腹が減ったときは指を舐めると甘くて栄養が!
ユサン:この世に2つとないアイテムというより、あっても役に立たなそうなアイテムをつくるルールじゃねぇーかッ!(仮面をかぶって戦闘人格に変わりつつ)
わさび:そんなことないよぉ。【チョコレート】って、誰かからの自分に対する《好意》を1点上げることができるんだよね。リジィがこの【籠手】を装備した指をつきだして「お舐めなさい」とかいうのかな。エローイ
ユサン:そんなはしたない効果のアイテムがあるかぁーーーーッ!!
わさび:それは、個人の感想であり、商品の効果・効能をあらわすものではありません
ユサン:適当いってんじゃねーよ。神をも殺した蛇石剣の錆びになりてぇのかぁ
わさび:はわわわわ。いいでしょう。じゃあ、おまけでもう1回特性表を振っていいですよ。これで終わり。ほんとに最後だよ!
ユサン:むう。ま、いいだろう。その結果を見てからでも遅くない。2D6だよな。ほらよ(コロコロ)……5だ
わさび:えーと。「そのアイテムは銘を持つ」だって
ユサン:銘?
わさび:えっとね。アイテムの名前だね。自由につけていいみたい
ユサン:つけるといいことあんのかよ?
わさび:んっとね。その名前に含まれている漢字一文字を選ぶと、その名前がついているモンスターの攻撃やスキル、もしくはその名前がついているスキルの効果を無力化することができるみたいよ
ユサン:……んーーーーー、よく分からなねぇなぁ
わさび:例えば、この「愚か」になる【チョコレート】製の【籠手】。これに、「籠手っちゃん」という名前をつけたとします。そして、「手」の字を選ぶと、名前に手のつくモンスターの攻撃やスキル、もしくは名前に手のつくスキルを、割り込みのタイミングで無効化できるのです
ユサン:名前に「手」のつくモンスターやスキルってあるか?
わさび:えーと……例えば【乗り】とか【からめ】とか【触】とか【の目】とか……
ユサン:百万迷宮に【手の目】はいねぇだろッ!!
わさび:いやぁ。分からないよ〜。まだ紹介されてないだけで、迷宮の奥にはどんな怪物が潜んでるか分からないよ〜
ユサン:ふん。まぁいい。「籠手っちゃん」って名前は気にくわねぇが、強いし、面白い効果じゃなねぇか
わさび:ただし、同じゲーム中に2回この効果を使うと、「籠手っちゃん」壊れちゃうけどね〜
ユサン:「籠手っちゃん」じゃねぇ! こいつの名前は……(しばし思案した後)人志だ! 松本人志!!
わさび:はぁ
ユサン:そして、「人」を選ぶぜ! 【魚】とか【二面】とか、「人」のつくモンスターは多いしな! それに、これで【間の屑】の【策士】を封じれる。お嬢様がイニシアティブをとるのに貢献できそうだ!
わさび:……つけるとバカになっちゃうけどね
ユサン:……
わさび:………
ユサン:…………
わさび:……………(てへ)
ユサン:やっぱ、お前殺す!(蛇石剣を手に、飛びかかりつつ)
わさび:あーーーれーーー、お助け〜〜
リジィ:(図書室の扉を開けて)あ! わさびじゃない!
わさび:おっす。お久しぶり〜
リジィ:きゃ〜! どうしたの? 眠ってなくて大丈夫ッ?
わさび:へーきへーき。オバカユサンが、どうしてもっつーから、不思議さま自ら降臨したのだったり。いや、所詮現世は不思議さまの見る夢だからね。いくらでも現実改変可能可能。らくしょーなのだ♪
リジィ:相変わらず何いってるか分からないわね! まぁいいわ。前に壊れた【神殿】を建て直しててみたの! 見にいってみない?
わさび:わ〜、いくいく〜
リジィ:わさびの【御神体】も一緒に建てたのよ!
わさび:をっほっほっほ。くるしゅうない。くるしゅうない



 バタン。
 図書室の扉が閉まる。
 残されたのは、仮面をつけたユサンと、床に転がっている「籠手っちゃん」改め「松本人志」(装備すると「愚か」になる【チョコレート】製の【籠手】)のみ。
 …………。
 ユサンは、がっくりとうなだれる。
 すると、唐突に図書室の扉が開き、リジィが顔だけをのぞかせた。
「とっても素敵な誕生日プレゼント、ありがとね。ユサン」
 たたたたたと駆けていく音と少女二人の楽しそうな声が、次第に遠ざかっていく。
 ユサンは、ほっとため息をつき、「松本人志」を一瞥すると、それを自分の両手につけた。指先をなめたら、ほろ苦いけど甘かった。



(おしまい)

  • このお話にでてくるキャラクターが何を言っているか分からない人は、下の本を読んでください。よろしくお願いします。