サタスペ・スペシァルシナリオ解説

十五年ありがとうございます。
『サタスペ十五周年記念サプリメント サタスペ・スペシァル』（通称スペスペ）が発売中でございます！

サタスペ15周年記念サプリメント　サタスペ・スペシァル (Role&Roll RPGシリーズ)

今回の目玉は、24本ものシナリオです。
毎月2回ずつ遊んでも、一年間は遊べる分量です。
ただ、シナリオは、自分がＤＤをやらないと読めないのでしんどいところもあると思います。
そこで、全24本の簡単なシナリオ解説をしてみたいと思います。
プレイヤー専門の人は、これを読んで、ＤＤに遊んでみたいシナリオをリクエストしてみてください。

• 上海ベイベ

SHANGHAI BABY
これは、元々は『REmix99』に入っていた最初のチュートリアルシナリオですね。「上海ベイベ」という名前しか明らかになっていない女の子を連れてくるように言われるシナリオです。元々は、最初の一本目のシナリオなので、遊ぶたびに展開が変わると、何度もマスタリングをするかもしれないＤＤが、飽きなくていいかな、と思ってつくったものでした。今回のエディションでは、ＤＤが自由に中盤の展開をコンストラクションできるようになっています。現在の『サタスペ』では、一話目は「虎」と相場が決まっておりますが、よろしければベイベも探してやってもらえばと思います。

• サタスペ★BANG! BANG!

SATASUPE BANG! BANG!
これは、タイトルにもなっている「サタスペ」こと「サタデーナイトスペシャル」をつくるシナリオです。「サタデーナイトスペシャル」とは、低品質の銃の総称です。銃の密造工場に忍び込んだ亜侠たちが、返り討ちにあって、武器をとりあげられた状態から脱出を試みます。トイレットペーパーの芯や洗濯ばさみ、豆とか、どう考えてもありえない材料から、色々な銃をつくりだしましょう。普段は役に立たない「サタスペ」ですが、こういう時は頼もしくみえるはず？

• そうだ、俺たちならやれる！

YES, WE CAN!
これは、プライベートでやってるキャンペーンで、速水さんがつくってくれたシナリオを元にしてますね。市会議員選挙で、ボンクラ二世議員を何とか当選させようとするシナリオです。わがままを言いまくる二世議員の護衛というかお守りをしたり、強引な票集めを行ったりします。票は、トランプで管理するんですが、裏向きにカウントするので、ＤＤもプレイヤーも最後にならないとどっちが勝ってるのか分からないところが面白いです。ナイスアイデア。速水メソッド全開のＮＰＣ名にも注目です。

• 大流行

PANDEMIC
こちらも、プライベートキャンペーンの速水さんのシナリオからつくられてます。大阪で大流行のきざしを見せる新型インフルエンザ。そのワクチンを探すシナリオです。当然、サタスペなので、症状は「流行病表」でランダムに決定されます。あと、このシナリオでは我らが乃木先生が病気になっており、その看病も行わなければいけないのも特徴です。ＩＰことインフルエンザポイントが上昇していくと、疫病系ボーカロイド「判出ミク」とか出てきます。ミクは見てみたいけど、ミクが出てるころには乃木先生の病状は末期的。

• 戻れま10

UNRETURNABLE
こちらは某テレビ番組の有名企画のようなことをするシナリオです。膨大なメニューの中から、『サタスペ』の有名人物が選んだベスト１０の品目を当てるというものです。満腹度をあげないように色々なものを食べ続けるわけですが、このメニューのバリエーションが、シナリオの特徴です。「土粥」、「干し靴下」、「サルマタケ」、「シャブスキー」、「ガンジスウォーター」、「蠱毒のグルメ」などなど。Twitterでは、よくプレイ報告を見かけますが、まだクリアしたという話は聞きません。ぜひ、挑戦してみてください。

• ヴィジランテ

VIGILANTE
『サタスペ』には上級職業っぽく「罪狩」という人たちがいます。これは、アメコミとか、特撮番組とかに登場するようなヒーローたちです。もしくは、そうしたヒーローに憧れて、自らコスチュームを身にまとい、ヒーロー活動を行うようになってしまった人たちです（アメコミの『キック・アス』とか、映画の『ミステリーメン』、『スーパー！』みたいな感じですね）。犯罪映画に憧れて亜侠になってしまったＰＣたちと、そんなに大差はありません。このシナリオは、銀行強盗の最中に、そんなヒーローの一人、「大宇宙の使者」ビッグ・グレイに出会ってしまうところから始まります。

• パートナー・チェンジ

PARTNER CHENGE
このシナリオは、デートにフィーチャーしたシナリオです。大阪犯罪会、伝説の亜侠「王の中の王」の娘たちは、顔もスタイルもそっくりの三つ子の姉妹。彼女たちと婚約を取り交わし、「王の中の王」の遺産を入手するのが、このシナリオの目的です。しかし、彼女たちのハートを射止めるだけではいけません。三人の娘たちは、誰が誰なのかが分かりません。自分のことを好きになってくれたあの娘が、本当は誰なのか？　それを推理することも大事なポイントなのです。もちろん『サタスペ』ですから、ライバルの妨害も起こります。パートナーがころころ変わるデートシナリオはどうなることでしょう？

• Fire Works

HANABI
このシナリオは、花火師から依頼されて、花火の材料を色々集めてくるものです。メインの部分は借り物競走ですが、背景には少しセンチメンタルな物語があります。夏の夜に遊んで欲しいシナリオです。

• 殺人倶楽部

MURDER CLUB
このシナリオは、ｄｃｚさんという人が原案です。『アジアンパンクGO!GO!』のマサトのプレイヤーさんですね。同い年なので、同じものを見て、同じものを読んでたりするので、すごく話があって大好きです。筋肉少女帯や特撮のライブに一番一緒にいくなぁ。まぁ、それはどうでもいいんですが。これは、学校に潜入して、ターゲットを暗殺するというシナリオです。大人や老人のキャラクターも、無理矢理生徒という形で潜入させられるのが特徴です。学園という箱庭を舞台に、ちょっぴりカッコいい『サタスペ』が遊べるかも。

• 女神様が降りてきた夜

GODDESS IS COMING DOWN AT NIGHT
このシナリオは、暗転丸さんという人が原案です。暗転丸さんは、十五年前『サタスペ』を買ってくれたうえに、ファンレターまで送ってくれた奇特な方です。以来、一緒にゲームを遊ばせてもらっています。シナリオの方は、ソ連軍の実験型偵察機の女性テストパイロットが登場し、彼女のお願いを叶えてあげるというものです。亜侠の前に立ちふさがる存在として、「装甲十字軍」という盟約が登場するのも特徴です。ちなみに、このシナリオでも、オープニングに夏と花火がでてきますね。『サタスペ』の風景は、青空と入道雲とか、しんしんと降る雪とか、極端な天気が似合う気がします。

• サタスペ９

SATASUPE NINE
このシナリオは、『サタスペ』で草野球を遊ぼうというものです。大阪市警の草野球チームの助っ人として、メンバー集めに奔走したり、実際に野球をしたりします。相手は地獄組と呼ばれる犯罪結社の野球チームなので、もちろん一筋縄ではいきません。草野球の試合後の飲み会まで、味わっていただけたら最高です。ちなみに、マリア・ヴィスコンティもチームメンバーだったりしますよ（メンバーが足りている限りは試合に参加しませんが）。

• おひっこし

REMOVEAL
このシナリオでは、引っ越しをします。引っ越しをしないといけない人の手伝いをします。昔、冒険企画局の仲間で、『サタスペ』の著者の一人でもある魚蹴さんの引っ越しを手伝ったんですが、そのあまりの荷造りの非道さに殺意を覚え（すごく大きなダンボールに文庫本が数百冊入ってたりしました）、その怒りのやり場をぶつける場所として、このシナリオをつくりました。その当の魚蹴さんが、このシナリオを遊んだプレイレポートを書いてくれてます（http://d.hatena.ne.jp/walkeri/20040328）。因果応報。ちなみに、つい先日、速水さんの引っ越しを手伝ったので、「おひっこし２」をつくる準備は万端です。

• いつか来た道

THIS ROAD SOMEDAY CAME
このシナリオは、少年時代と現代を行き来する、ちょっとトリッキーなシナリオです。同窓会で出会ったＰＣが、回想として路地裏のダンジョンを探索し、その後、現代パートに戻って、再びそのダンジョンの最深部にある秘密基地へと向かうのです。時間の経過のせいで変わってしまった場所や、子供のころゆえの微妙な記憶違いなんかが発生したりします。ノスタルジックな雰囲気を楽しんでみてください。

• 12人の困った大阪人

TWELVE FUNNY OSAKAN
こちらもトリッキーなシナリオで、陪審員ものです。なぜか殺人罪で起訴されたマリアを救うため、12人いる陪審員のうち、４人と入れ替わり、残りの有罪を主張する８人を説得するのが目的です。あらゆる手段を駆使して、「無罪」を勝ち取るわけですが、８人の陪審員ごとに設定された性格を読み取り、うまいロールプレイを行うことがミッション達成のキモになってきます。８人の陪審員をカードやコマか何かで表すと、遊びやすいかもしれません。

• サタスペワールドツアー

WORLD TOUR
このシナリオは、『デッドマン・ウォーキング』に登場する「屍人」になりかけた亜侠たちの物語です。本来死ぬ運命ではなかったはずのＰＣたちが、自分の死を取り消してもらうために、脱走した「屍人」を追いかけて世界に飛び出していきます。『サタスペ』で、大阪の外に行くのが、いかに大変を味わうことができるかもしれません。あと、血戦がマジ厳しいです。

• バベルの塔

TOWER OF BABEL
このシナリオは、取り壊される建物の住人と交渉して、何とか穏便に出ていってもらうのが目的です。しかし、残っているのは、少数民族だったり、儀式の最中だったりして、まともしゃべって交渉することができない相手ばっかりです。そんな人たち相手に、ボディランゲージやとんちを使って交渉を行うのがポイントです。オンラインセッションでは、ちょっと難しいかも。そのときだけ、カメラ機能を使うのもあり？

• こんにちわ赤ちゃん

HELLO MY BABY
このシナリオは、友人から妊娠した妹の本当の父親を捜してくれと頼まれるシナリオです。情報収集をしていくと、父親のヒントが色々判明するのですが、その内容は、基本的にはランダムに決定していきます。そして、その父親像によって、結末が変化するというマルチエンディングなシナリオです。これもまぁ、トリッキーなシナリオですね。

• 命の洗濯

ENJOY COMPLETE CHANGE
これは、プライベートなキャンペーンで河嶋さんがやったシナリオですね。地獄のように風呂に入りまくるシナリオです。実際のシナリオとは関係ないですが、これを遊んだとき、マンチさんとｄｃｚさんのキャラが恋人同士だったんですが、一緒にいるときに、三下に襲われた結果、ｄｃｚさんとマンチさんが二人とも「ファンブルからの逆転」で〔精神点〕が０になって、ｄｃｚさんは【負け犬】が発動して「死のう」ってなるし、マンチさんはラブニャンの【般若】が発動して「地獄の兵卒」になって屍をきずきまくるしですごく面白かった印象があります。
追記：このシナリオには、エラッタがありました。ごめんなさい。公式サイトをご確認ください。
http://www.bouken.jp/product/satasupe/support.html

• 標的1042

TARGET "1042"
これは、１オン１用のシナリオですね。ＤＤ１人とプレイヤー１人で遊ぶシナリオです。謎の依頼人から届いた指令に従って、あるマンションの１０４２号室の住人の暗殺を試みるわけです。ギャグとかなくて、ハードな感じのすごく格好いいシナリオなんですが、１人用にしては、結構厳しいバランスなんですよね。ただ、その分、生き残れば必ずＭＶＰがもらえるのがいいところです。カルマは、必ず「殺し屋」がとれますしね。こんな感じで、必ず「泥棒」のカルマがとれるシナリオ、「裏職人」がとれるシナリオとかつくりたいです。必ず「キジルシ」がとれるシナリオは、もうできてるんですけどね。

• ぼくらの２日間戦争

TWO DAYS WAR
これは、大学の部室争奪戦をやるシナリオです。『究極超人あ〜る』みたいな感じでしょうか。ＰＣは大学生限定です。構成員が自分しかいない変なサークルの代表になって、みんなで自分たちの部室を確保するための籠城戦を行います。このシナリオでは、《趣味的武器》をフィーチャーした追加ルールも使用します。サークルの種類にちなんだ、へんてこな武器を操る奇人変人バトルをお楽しみください。

• 契約刑事24時

RENT A COPS
これは、契約刑事になるシナリオです。契約刑事として定例任務をこなしながら、大阪で起こっている謎の連続殺人事件の捜査も行います。二つ以上のタスクを並行して行う、ちょっと『ＣＳＩ』とか、海外の刑事ドラマっぽい感じを狙っています。このシナリオをテストしたときは、太宰ラマ十四世という刑事がいたのを覚えています。「恥の多い転生を繰り返してきました」というのが口癖。実に『サタスペ』らしいキャラでした。泥酔さんというプレイヤーさんのキャラクターです。

• 浮気娘が暗黒太陽

THE DEATH SUN OF BIMBOS
これは、『まるごと一冊冒険企画局』というムックに掲載された遊侠というキャラクターのためのシナリオです。遊侠は、テーブルトークＲＰＧが好きで好きで仕方なくて、好きを極めることで、色々なゲームにちなんだ特殊能力を使えるのです。ファンブルすると経験点がもらえたり、スタイルが実像を越えたりします。『サタスペ』世界の大阪では、テーブルトークＲＰＧが大流行しており、こうした遊侠も数多く存在しているのです。肝心のシナリオの方では、ＯＧＣという、世界最大のゲームイベントで発生した殺人事件の調査を行います。雑誌掲載時は、ラストの敵が弱かったんですが、『スペスペ』掲載に合わせてじゃっかん強化してあります。あ、それから『スペスペ』には、遊侠用の追加ルールや、追加カルマなんかも載ってます。こちらも面白いですよ。

• 裸のマンチ

NAKED MUNCHKIN
これは、『REmix＋』のサプリメント『ドラゴン』に収録されたシナリオを、現在のルールに合わせてリファインしたものです。「強さ」を追い求める存在として、「マンチ」という言葉を使っています。しかし、タイトルとは裏腹に、シナリオの前半部分では、なぜ自分が強さを追い求めたのかという理由を探し求める調査パートになっています。このシナリオを遊べば、テーブルトークＲＰＧにおける「強さ」というのがなんなのか分かる……かもしれません。

• 雪が降る街

SNOW CITY
ようやく最後のシナリオです。ＰＣたちの目的は、歳末にアルバイトをしまくって、何とか借金を返済することです。「戻れま10」や「命の洗濯」と同じく、色々なバリエーションのクエストに挑戦する系シナリオです。愚直ですが、楽しいです。歳末なので、走っている師を捕まえたり、コミケの原稿を手伝ったりします。ちなみに、シナリオ中の時間は、12月29日の朝から12月31日の夜まで。亜侠たちは、無事に歳を越すことができるんでしょうか。まさに、今、この瞬間に遊んで欲しいシナリオです。

今日で今年の冬コミ、終わりました。
十五年前の冬、ぼくらもコミケで『サタスペ』を売っていたんだなぁ。
もう十年近く、コミケには行ってないです。
久々に行ってみたいですねぇ。

今年も残りわずかです。
河嶋さんたちは、なんとかもう１ゲームとしゃれ込みたいと思います。
よいお年を。